轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

それなれば、倭文子にどの様な恨みがあるのかは知らぬけれど、彼の企ては、充分すぎる程成功したといわねばならぬ。世の中にこれ程残酷な責め苦が、またとあろうとは思われぬからだ。

それはとも角、倭文子の苦しみは、最早ここに書き記すのも恐ろしい程であった。

火焔は母の着物の裾に、子の洋服のズボンに、チリチリと燃え移り、避けるにも、身動きもならぬ箱の中、その上ふたを押し上げようと、力をこめれば、焼こげてもろくなった底の方が、メリメリとくずれ相で、もう棺を破ることも出来ぬ。ただ声を限りに泣き叫ぶばかりだ。

だが、その泣き叫ぶことさえも、今は不能になった。立ちこめる毒煙は、目、口、鼻を覆むせ返り咳き入って、叫ぶはおろか、息も絶え絶えの苦しみである。

無慙にも、幼い茂少年は、もう母親の見境がつかず、まるで彼女を恨み重なる仇敵でもあるかの様に、倭文子の胸に武者振りつき、柔かい肌に、けものの様な爪を立てて、かきむしり、かきむしるのであった。

そして、アア、何というむごたらしいことだ。我子の苦悶を見るにたえ兼ねた母親は、自分も死に相にうめき入りながら、無我夢中で茂の頸に両手をかけ、絞め殺そうとしたのである。