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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「たとえばですね」
明智は相手の顔色を見て取って水を向けた。
「例の代々木のアトリエにあった三人の女の死体ですね。あれの身元は分りましたか」
「アア、それなれば、僕の方でも手を尽して調べているのですが、不思議なことに今以てあれに相当する様な、家出娘を発見しないのです」
「あの三人の娘は、みなひどく腐らんして、顔も何も分らなくなっていましたね」
明智はふとそんなことをいって相手の顔をジロジロ眺めた。恒川氏は、
「そうでした」
と答えたものの、明智の意味を悟りかねて困惑の体だ。
「ところで、恒川さん。幸いあなたが御出でになったから、一つ見て頂き度いものがあるのですよ」
明智の話しはまたもや飛躍した。
「なんです、拝見しましょう」
警部は、それがあんな奇妙な代物とは、思いもよらず、気軽に答えた。
明智は席を立って、次の間のドアを開いた。彼の居間兼書斎である。
「あれです」
恒川氏も立って、ドアの所まで来たが、一目書斎をのぞき込むと、流石の鬼刑事も、度胆を抜かれて「アッ」と立ちすくんでしまった。
そこには、探しに探していた、畑柳倭文子と茂少年が、こちらをむいてたたずんでいた。