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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
恒川さん、君がこの事件に関係なすったのは、あの日が最初でしたね」
「そうです。あの日から僕は悪魔にみ入られているのです。あれから僅か十日余りの間に、国技館の活劇、風船男の惨死、斎藤老人殺し、畑柳夫人の家出と、事件は目まぐるしく発展しました。しかも、それが、どれもこれも前例もない突飛千万な、あるいは気違いめいた、不思議な出来事ばかりです」
警部はてれ隠しの様に、やけくそな調子でいった。
「で、斎藤老人達が、この部屋を立去ってから、あなた方警察の人達が来られるまで、約三十分の間に、どんなことが起ったか、それをこれから実演してお目にかける訳です」
明智は構わず口上を進める。
だが、実演して見せるといって、ここには口上係りの明智と、二人の見物人の外には、わら人形がころがっているばかりだ。一体全体誰が実演するというのだ。
見物達は、まるで狐につままれた感じで、刻一刻暗くなって行く部屋の中を、目が痛くなる程見つめていた。
カチカチカチカチ、懐中時計の秒を刻む音が、やかましく耳につく程の、静けさだ。
恒川氏は、ふと、部屋の中のどこかで、物のうごめく気配を感じて、ギョッとした。