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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

恒川氏は、明智の言葉が子供だましみたいで、どうにも合点出来なかった。

「偶然ではありません。両方とも本当の片輪だとすれば、そんな風にお考えになるのも無理ではありませんが、一方は真赤な偽物です。……サア、それを取って下さい」

明智は半分を恒川氏に、あとの半分を、黒マントの人物に向っていった。

その指図を聞くと、黒マントの男、いや女は、手早く帽子をかなぐり捨て、耳のうしろまで、自分のあごに手をかけると、いきなり、我が顔を、メリメリとめくり取った。……それは非常に精巧なろう製のお面に過ぎなかったのだ。

お面の下から現われたのは、――見物の二人は、さい前から薄々感づいてはいたが――明智の女助手文代さんの、美しい笑顔であった。

「よっちゃん、あなたも覆面をおとりなさいな」

文代さんは、お芝居の中で彼女がしめ殺した、黒装束の小怪物に、優しく声をかけた。

すると、醜怪な一寸法師は、声に応じて、顔にまきつけていた黒布を、クルクルと解いて、

「アア、苦しかった」

と、快活な調子で、ひとり言をいった。

読者も想像された通り、それは同じく明智の助手の、小林少年であった。

「アア、やっぱり君達でしたね。