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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
幸い、その部屋に卓上電話があった。病院を呼び出して、しばらくまつと、明智の弱い声が出た。彼は熱のある身を、病院の電話室まで運んだのだ。
警部は要領よく、殺人現場の模様、犯人の侵入不可能であった事実を告げた。
明智は電話口で、しばらく考え込んでいる様子だったが、やがて、やや活気づいた声が響いて来た。
「倭文子さんは、その部屋の家具も新しいものと取替えたのですか。そして、その家具屋が来たのは、いつでしょう。誰かに聞いて下さい」
警部はお波にたずねてから答えた。
「すっかり取替えたのだそうです。家具屋が運んで来たのは五日前だそうです。しかし、それが何か……」
「五日前……谷山のお化が現れたのも、台所の食べものがなくなったのも、丁度その頃からですね」
「アア、そういえば、そうですね」
恒川氏は、真相は分らぬながら、何か意味ありげな時日の一致に驚いて答えた。
「倭文子さんは、長椅子の前に倒れていたのですね。……それで、婆やがその部屋を出る時には、被害者はどこにいたのです。長椅子に掛けていたのではありませんか」
「そうです。その通りです」
「すると、長椅子の上にも血が流れてはいませんか」