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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
三谷が不安そうに尋ねると、警官は笑って見せて、
「我々がついています。現場附近に数名の巡査を伏せて置いて、万一の場合は、八方から飛出して、有無をいわせず引括ってしまいます。それに、犯人にとって、子供は大切な商品なのですから、仮令この計画が失敗しても、危害を加える様なことは、決してありません。一体、身代金請求なんて一時代前の古くさい犯罪で、今時、こんな真似をする奴は、よっぽど間抜けな賊ですよ。それに、従来この手で成功した例は、殆どないといってもよい位です」
結局、当夜は、予め現場附近の森蔭に七八名の私服刑事を、潜伏させて置いて、表面上は倭文子が単身、茂少年を受取りに出向くということに、相談が一決したが、三谷は倭文子の身の上を気遣う余り、更に奇抜な一案を提出した。
「倭文子さん、僕にあなたの着物を貸て下さい。あなたに化けて、僕が行きましょう。僕は学生芝居の女形を勤めた経験がある。鬘だって訳なく手に入ります。真暗な森の中です、大丈夫ごまかせますよ。それに、僕が行きさえすれば、腕ずくだって、茂ちゃんを取戻して来ます。そうさせて下さい。あなたをやるのは、どうも危険な気がします」