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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「併し、賊はそこから這入ったのです。我々も這入れぬという訳はありませんよ」
明智は無論妖術を信じてはいなかったのだ。
並んだ屋敷を迂回して、広い復興道路に出で、そこから裏手の高い塀にはさまれた、問題の通路へ曲って行った。
「ここですね」
「そうです。ごらんの通り、梯子を掛けて乗り越す外には、ここから邸内へ這入る方法がないのです。どんな高飛びの名人だって、この高い塀に飛びつくことは出来ません。それに、上には一杯ガラスのかけらが植えつけてあるのですから」
「あの晩は月夜でしたね」
「昼の様な月夜でした。それに、繩梯子をかける余裕なんて、絶対になかったのです」
二人はそんな会話を取交しながら、その通路を行ったり来たりした。明智は両側のコンクリート塀を見上げたり、地面を眺めたり、そうかと思うと、突然広い幹線道路に走り出して、附近を見廻していたが、例の一種異様のニコニコ笑いをして、妙なことをいい出した。
「賊がここから這入ったとすれば、仮令我々の目に見えなくても、どこかに出入口がある筈です、例えば、余り変てこな出入口である為に、我々はマザマザとそれを見ながら、少しも気がつかぬ様な。