轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
見渡した所、明智の姿がかき消す様に、なくなっていたからだ。
彼は外へ走り出たいのを、やっと我慢して、階段を駈降り、扉の中を探し、狭い穴蔵の中をキョロキョロと歩き廻った。どこにも人の気配さえせぬ。
墓場の様な静けさ。陰気なカンテラの赤茶けた光り。目に浮ぶは、いつかの晩の、あの恐ろしい怪物の姿だ。唇のない歯ばかりの笑い顔だ。
三谷は背筋に水をあびた様な感じで、急いで穴蔵を飛出し、階段を昇り始めた。すると、どこからか、姿はなくて、声ばかりが、
「三谷さん……」
と聞こえて来る。ギョッとして、立止り、
「どこです。どこにいらっしゃるのです」
叫ぶ様に聞き返す。
「ハハハハハハハ、ここですよ」
パチンと音がして、三谷の頭の上でライターが点ぜられた。
見ると、階段の天井に、平蜘蛛の様にへばりついた明智の姿。
「これが賊の妖術ですよ。ごらんなさい。この両側に、天井を支えている太い横木があります。これに両手両足を突っ張っていれば、下を通る人は少しも気がつきません」
明智は天井から飛び降りて、手をはたきながら、
「つまり、賊は、あなた方が奥の穴蔵へ這入ったのと、引違いに、この隠れ場所を降りて、外へ逃げ出してしまったのです。