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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

でも三津子は口を開こうとしない。

「ちょいと君、大寺君」と検事が呼んだ。

「そういうもう既に答の出ていることは訊いても仕様がないじゃないか。もっと新しい事実の方を掘りだして、事件の解決を早くしたいもんだね」

警部はいやな顔をした。帆村探偵が、おどろいたような顔で長谷戸検事の方を見た。

「ですが検事さん」と警部はいった。

「この女が如何にしてこの家の主人に毒を呑ませ、そしてこの邸からずらかったか、それを当人から聞くとは新しいことではないですか」

「主人の死んでいた部屋には、内部から鍵を廻してあった。三津子君が殺したものなら、どうしてその密室から出るか。玄関にも、内側から錠を下ろしてあったのだよ」

「ここの窓から飛び下りられますよ。窓には鍵がかかっていなかった。二枚の合わせ硝子戸を寄せてあっただけですから」

警部の毅然たる解答に、帆村がにんまりと笑った。

「待ちたまえ。窓枠にも窓下にも、三津子君の足跡も指の跡もなかった。たとえ若い婦人がいざという場合には、こんな高い窓から外へとび下りることが出来ると仮定してもだ。しかもその窓硝子を外から締め合わせたとなると、この婦人は女賊プロテアそっちのけの身軽だといわなければならない」