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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

これには大寺警部も、すぐに応える言葉を知らなかった。窓のところの証拠固めは彼がしたのであったから、今彼は自縄自縛の形になってしまったわけだ。

検事は、それごらんといいたげな顔。

「甚ださし出がましいですが、それはこうも考えられますね」帆村が沈黙を破って、しずかに足をはこんで三津子の前へ出て来た。「つまりですね、まず旗田鶴彌氏に毒をのませる。その毒がまだきいて来ない前に旗田氏に玄関まで送らせて自分は外へ出る。旗田氏は玄関を締め、それから居間に錠をおろしてこの部屋にひとりぼっちとなる。そのうちに毒がきいて来て、氏は皮椅子の中で絶命する――というのはどうです」

「ああっ、それだ」

大寺警部は失せ物を届けられたときのように悦んだ。検事の方は、同意を示すためにしょうことなしに頭をちょっとふった。

「土居三津子。今の話を聞いたろう。あの通りだろう」

警部は三津子にいった。三津子は兄の友人である帆村の発言に気をよくしたのもほんの一瞬のことで、論旨を聞けば気をよくするどころではなかった。それで彼女は涙を出した。

「いや、警部さん。僕が今言ったのは、単なる有り得べき解答の一つをご紹介しただけのことです。