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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
三津子に対する訊問は、この際ちょっと脇へ寄せておく外なかった。帆村の言い出した瓦斯中毒説は、真偽いずれにしても多数の論点を抱えこんでいる重大なる問題であったから。だから検事が、
「瓦斯中毒説を、もうすこし深く切開してみようじゃないか」
といったのは尤もだった。
「まず先に、私にいわせて貰おう」と検事は言葉を続けた。「瓦斯中毒のために、この家の主人鶴彌と一匹の溝鼠とが同時に心臓麻痺で死んだとする。そういうことは如何なる状況の下に於て在り得べきことか。その毒瓦斯は如何なる種類のもので、どこにどうして保存されてあったか。そしてそれは如何に殺人のために用いられたか。それからその毒瓦斯は鶴彌と鼠一匹を斃しただけで、他に被害者を生じなかったのはどういうわけか。――まあ、ざっとこれだけのことが明白にせられなければならないと思う。そうじゃないかね、帆村君」
帆村は聞き終って、かるく肯きながら検事の方へ静かに向き直った。
「正直なことを申すなら、今検事さんが提示された諸件について、僕は一々満足な回答を持ち合わせていません。つまり、これから調べたいと思うことばかりなんです。