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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
彼は急いで灰をハンカチーフの中に丸めこみ、上衣の左のポケットへ押しこんだ。彼の仕事は、まだそれで終ったのではなかった。彼は右のポケットから白い紙を折り畳んだものを引張り出した。それを指でつまんでひろげた。四つ折になっていた純白の無罫のレター・ペーパーだった。それを灰皿の上へ持っていった。それからライターを出して火をつけた。ライターの焔を、紙へ移した。紙はめらめらと燃えあがった。そしてあとに黒ずんだ灰を灰皿の上いっぱいに残した。彼は煙草を一本つまみだして口にくわえた。そしてこれに火を点じて、急いで煙を吸った。が、たちまちはげしく咳きこんだ。煙にむせたからであった。彼は周章てて戸口の方へ急いだ。足を廊下へ一歩踏みだしたと思ったら、彼は声をかけられた。彼は咳きこんでいて、よく目が見えなかったのだが、そのとき廊下をこっちへゆっくりと歩いて来た人物が、亀之介の姿を認めたのである。
「ほう、どうしました、亀之介さん」
「やァ、煙草にむせちゃって――あっ、帆村君ですね」
地獄の使者
帆村荘六だった。彼は検事たちと共に確かに自動車に乗って出掛けた。それがなぜここに姿を現わしたのであろうか。