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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

検事の外、二三名が上へ上る。後からついて来た帆村は、花瓶の方にはあまりに興味がないらしく見え、その代り広い二間の押入の襖をあけてみる。

中は、きちんと片づいていた。赤い友禅模様の夜具が、この部屋の主には少し不釣合なほど艶かしい。帆村の手が伸びて、下段の端に置かれてある小型の茶箪笥の扉を開いた。するとその中には徳利や猪口が入っていた外に、清酒の一升壜が半分ほどの酒を残しているのが収ってあった。ついでに帆村の手が、その隣りの、臙脂色の塗箱の引出の一つ一つに掛けられた。帆村の記憶にはっきり残ったのは、袋入りの秘戯画と、沢山の上質のみす紙とであった。

「おい帆村君。これを見なくてもいいのかね」

長谷戸検事の声に、帆村は押入の襖を閉めてから検事の傍へ行った。

「この花瓶なんだが、底に深さ一糎ばかりの水が残っていた。ピストルは、銃口を下にして入っていたそうだ。ところがピストルの銃口を虫眼鏡でよく調べたが、錆はまだ全然発生していない。だからこのピストルが花瓶の中へ隠されたのはこの一両日のことだということが推察される。それだけのことなんだが……」

「どうもありがとうございました」