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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
帆村の申出に、一座には顔をしかめる者もあったが、長谷戸検事はすぐ警官を手招きして、亀之介をここへ連れてくるように命じた。
暫くすると、二階の居間を出た亀之介が、のっそりとこの広間へ入って来た。
「何の用ですか」
機嫌はよろしくない。
「お聞きしたいことがある。そこへ掛けて下さい。この帆村が訊きます」
検事は親切に帆村のために段取を整えてやった。亀之介は、椅子をこの前と同じく、窓の傍へ引張っていって腰を下ろした。そしてまだ先刻のままに窓枠のところに載っている灰皿へ、葉巻の灰を指先で叩いて落とした。しかし灰は、まだいくらも先についていなかった。
「簡単なことをお訊ねいたしますが」
と帆村は丁重に口を切った。
「昨夜この邸へお戻りになったとき、玄関の扉を開けてあなたをお入れしたのは、家政婦さんだったそうですね」
「そのとおり」
「家政婦さんはどんな服装をしていましたでしょうか」
「はははは」と亀之介が突然笑った。
「醜態でしたよ。上に錆色のコートを着、裾から太い二本の脚がにゅっと出ていました。そして当人は気がつかないらしいが、後から赤い腰紐が、ぶらんとぶら下って床に垂れているんです」