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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

長谷戸検事は、小さく肯いて、心の中に何かノートをとるらしく見えた。

「ちょっと伺いますが」

と大寺警部のきんきん声がした。

「ピストルの弾丸が頭の中に入った時刻と、死んだ時刻との差はどの位だか分りますか」

「あまりはっきり分らんね」

「大体何時間ぐらい後になりますか、ピストルの弾丸を喰らったのは……」

「何時間というような長い時間じゃない。極く接近しているよ。一時間前後という所だ」

「すると、死んだのは十一時半、ピストルの弾丸を喰ったのは零時半という訳ですね」

「そんなところだ」

古堀博士はぶっきら棒に応えた。

「解剖の結果、胃の中にあった食物の一覧表は出来ていますね」

検事が、もう一度発言した。

「それは先刻、書記へ渡しておいたがね」

「いや、そんなものは頂きませんですよ」

色の真黒な書記が、すっくと突立って打消した。

「そんな筈はない。ちゃんとわしは書いて――ああ、あった。ポケットの中に残っていた。これじゃ」

博士は笑いもせず、内ポケットから、皺くちゃになった紙片をつかみ出して、机の上へ放り出した。くすくすと笑う者があった。その胃内容物一覧表は、長谷戸検事の手に渡って、拡げられた。