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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

帆村は立上ると検事の背後へ行って、その表を熱心に覗きこんだ。

「もう質問はないかな。なければ帰るよ」

博士はもう腰を半ばあげた。誰も博士を停める者はなかった。博士がパイプに火を点けて、この部屋を出て廊下を五足六足歩いたとき、帆村が追って来て博士を呼び停めた。

「先生、あれはどうなりました」

「あれとは何じゃ」

「鼠です。鼠を解剖してご覧になりましたか」

「おお、そのこと……解剖はした。解剖はしたが、はっきり分らない。人間の心臓麻痺は一目で分るが、鼠が心臓麻痺したかどうかはちょっと分らんのでね。そのことも実は研究題目の一つにして、今やっているところだ」

「流石は先生ですね、大いに敬意を表します」

「何じゃと……」

「いや、つまり先生が、鼠を解剖して、やはり心臓麻痺かどうかを調べられたその着眼点のよさですね、それに敬意を――」

「わははは、何をいうかい」

と博士は破顔して

「今日中に分るだろうから、分ったら君の事務所へ知らせてやるよ」

博士はこの約束を果した。

その日のお昼のすこし前、帆村が旗田邸に居ると、事務所から電話がかかって来た。出てみると、八雲千鳥が当惑し切ったという旨で、