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じごくのししゃ

地獄の使者

海野 十三

「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页

青空文庫

その皮椅子の空洞にもう少し近づいて中を覗きこんだ者は、そこでもう一つ違った刺戟を受けるであろう。それは皮椅子の底に、艶めかしいハンドバグが貼りついたように捨て置かれてあることだった。もちろんこのハンドバグは、旗田鶴彌殺しの第一の容疑者である土居三津子の所有物であり、それは当夜屍体の下敷きになっていたものであることは読者の記憶にあるとおりだ。

さて今日は、いよいよこの土居三津子がこの部屋に呼ばれることになっていた。前日三津子は護送自動車で玄関先まで来たのであるが、鶴彌の死因についての裁判医の鑑識があまりにも意外な結果を公表したので、三津子の取調べは昨日は急に延期となったものであった。

「土居三津子はまだ到着しませんが、間もなく――そう、あと十五分位したら到着する筈だ。それまでに今日までの捜査結果の概要を復習して置こう。なお私の述べるところと違った見解を持つ人は、あとでそれを言って貰いましょう」

そういって検事は、従来捜査の主流をなしていた彼自身のもの、大寺警部の考えているところのもの、古堀博士の鑑定、それから帆村探偵が問題として指摘したものなどについても述べるところがあった。