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じごくのししゃ
地獄の使者
海野 十三
「自警」1947(昭和22)年1月~1948(昭和23)年1月(5、6、11月は欠)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,419 字 · 152 页
その口述において、検事は自分が鶴彌殺しの犯人として始めは家政婦を疑ったが、それが芝山の証言により解消した。ところがその後古堀裁判医の鑑定によって死因は心臓麻痺と変ったため、今は全く出発点へ逆戻りの形となったことを述べ、これに対し大寺警部は今も尚土居三津子を有力なる容疑者として考えていると思われるが、それに相違ないかと、検事は警部に訊いた。
「そうですとも、私は始めから土居だと睨んでいて、途中でもその考えから変ったことはありません。もちろん裁判医が何と鑑定をしようと、私の考えは微動もしませんです」
と、強い自信を奇声に托して宣言した。
「死因のピストル説が、心臓麻痺に変っても、君の土居三津子を容疑者とするの論拠はすこしもゆるがないというんだね」
検事は、すこし硬くなって、訊き返した。
「その通り。土居はあの夜、主人鶴彌に面接した最後の者でありますぞ。そして自分のハンドバグを残留してこの屋敷を飛出したほどの狼狽ぶりを示している。一体あの女のこの周章狼狽は何から起ったことでしょうか。これこそ乃ちあの女が当夜鶴彌に毒を盛ったことを示唆している。自分で毒を盛ったが、それに愕いて、急いで逃げ出した。