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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
だから、薄井もちょっと反駁のしようがなく、暫らく、乾燥バナナの中に毛虫を見つけたような顔になっていたが、
「じゃ、君なんか恋愛をしても、二流の恋愛しかしないんだね」
そう言いながら、ちらと冴子の顔を見た。
信吉は薄井が冴子を計算に入れて、議論を飛躍させたことに気がついた。
薄井は、たまたまホテルの受付で冴子と出会い、冴子が信吉を訪ねて来たらしいと知った時、女優めずらしさの田舎の文学青年が、うぶな気持で冴子に接近したがっているのだろうぐらいに考えて、かつは邪魔をし、かつはからかってやる積りで、紹介してくれと頼んだのだが、今はこうして会って見ると、信吉という人間の、一見デカダンスのふてぶてしさを嗅ぎつけると、ふと脅威を感じた。だから、冴子の前で、信吉の恋愛に関するデカダンスを信吉の口からばくろさせてやろうと思ったのである。
「一流の恋愛とはどんな恋愛ですか」
「プラトニックに、お互いを向上させて行く恋愛だね。恋愛を人生の崇高な目的である人間完成にまで高めるために、精神的に結合させるのが、一流の恋愛だ」
「まア、僕にはむつかしいですな。せいぜい二流の恋愛しか出来ない」