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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

それに、冴子は銀座の何とか帽子店の宣伝係みたいに、ツバの広い帽子を大胆にかぶっていた。雨だというのに……。大阪ではこんな大きな帽子をかぶるような思い切った娘はいない。そのことも、ちょっと信吉を、気おくれさせた。もっとも、辟易させた――と言った方がいいかも知れない。何れにしても、冴子は昨夜の、ふとうらがれた大部屋女優の感じはなかった。今日の冴子はまごうかたなく銀座の娘だ。

九州の女を相手にするようなわけにはいかない――と、ちょっと冴子の「銀座スタイル」に信吉は柄にもなく圧されていた。大阪者の悲しさだろうか、もっとも、

「女はみんな同じだ」

とは、これまでの経験による信吉の、やぶれかぶれの持論だった。

ただ、エティケットが違うだけだ。だから、慎重を要する。しかし、心にもない技巧は使えまい。心にもない――とは、つまり不自然なという意味だ。

食事が終った。

「これからどうする……? 楽屋入りまでまだ大分時間があるだろう……? 銀座を歩く……?」

これは自然だ。

「雨の中を……?」

この返答も計算にはいっていた。

「じゃ、ロビイで話でもするかな」

「ホテルのロビイなんかで、男の方とお話をするなんて、いやだわ。