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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
左翼の連中が右翼にやすやすと転向したり、大政翼賛会の中に左翼くずれがうじゃうじゃといてしきりに右翼ぶっているのは、左翼と右翼に共通した情熱があるからではないでしょうか」
信吉は田村の演出している時局劇が、ふと左翼劇と同じようなアジ的雰囲気を持っていることを、想い出した。左翼劇の特徴だった呶号的エロキューションや、集団的演出法が、そのまま時局劇に採り入れられて、しかもそれが、その限りでは少しも不自然ではない。
これは一体どうしたことだろうと、考えて、信吉は次の結論に達した。
「――左翼と右翼は、結局正反対ですが、二つの極端というものは、どこかで一致点があるのですね。だから、旧左翼の連中なんか右翼に転向して、たとえば翼賛会の仕事をしていると、昔やっていた組織を作るという運動が、そのまま翼賛会でやれるという点に、案外張り合いを感じてるんじゃないですか。いわば、思想の内容なんか問題じゃないんですね。自分の仕事の型さえ似てりゃ、それでいいのじゃないですか。型というより感覚ですね。つまり、思想よりも感覚……」
「まア、そんな見方もあるでしょうね」
と、田村はくわえていた煙草を、口からはなさず、眼鏡の奥で微笑していた。