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かげをふまれたおんな
影を踏まれた女
岡本 綺堂
「講談倶楽部」1925(大正14年)9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,608 字 · 23 页
伯母は家へ帰ってその話をすると、要次郎はまた怒った。
「近江屋の叔父さんや叔母さんにも困るな。いつまで狐使いの行者なんかを信仰しているのだろう。そんなことをしてこっちをさんざん嚇かしておいて、おしまいに高い祈祷料をせしめようとする魂胆に相違ないのだ。そのくらいの事が判らないのかな。」
「そんなことを言っても、論より証拠で、ちょうど百日目の晩に怪しい影が映ったというじゃないか。」と、兄は言った。
「それは行者が狐を使うのだ。」
またもや兄弟喧嘩がはじまったが、大野屋の両親にもその裁判が付かなかった。
行者を信じる兄も、行者を信じない弟も、しょせんは水かけ論に過ぎないので、夕飯を境にしてその議論も自然物別れになってしまったが、要次郎の胸はまだ納まらなかった。夕飯を食ってしまって近所の銭湯へ行って帰ってくると、今夜の月はあざやかに昇っていた。
「いい十三夜だ。」と、近所の人達も表に出た。中には手を合わせて拝んでいるのもあった。
十三夜――それを考えると、要次郎はなんだか家に落ちついていられなかった。かれはふらふらと店を出て、柴井町の近江屋をたずねた。
「おせきちゃん、いますか。