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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

そのうちに嘔気が来た。

始めは煎薬に似た黄黒い水をしたたかに吐いた。吐いた後は多少気分が癒るので、いささかの物は咽喉を越した。しかし越した嬉しさがまだ消えないうちに、またそのいささかの胃の滞うる重き苦しみに堪え切れなくなって来た。そうしてまた吐いた。吐くものは大概水である。その色がだんだん変って、しまいには緑青のような美くしい液体になった。しかも一粒の飯さえあえて胃に送り得ぬ恐怖と用心の下に、卒然として容赦なく食道を逆さまに流れ出た。

青いものがまた色を変えた。始めて熊の胆を水に溶き込んだように黒ずんだ濃い汁を、金盥になみなみと反した時、医者は眉を寄せて、こういうものが出るようでは、今のうち安静にして東京に帰った方が好かろうと注告した。余は金盥の中を指していったい何が出るのかと質問した。医者は興のない顔つきで、これは血だと答えた。けれども余の眼にはこの黒いものが血とは思えなかった。するとまた吐いた。その時は熊の胆の色が少し紅を含んで、咽喉を出る時腥い臭がぷんと鼻を衝いたので、余は胸を抑えながら自分で血だ血だと云った。玄耳君が驚ろいて森成さんに坂元君を添えてわざわざ修善寺まで寄こしてくれたのは、この報知が長距離電話で胃腸病院へ伝って、そこからまた直に社へ通じたからである。