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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

別館から馳けて来た東洋城が枕辺に立って、今日東京から医者と社員が来るはずになったと知らしてくれた時は全く救われたような気がした。

この時の余はほとんど人間らしい複雑な命を有して生きてはいなかった。苦痛のほかは何事をも容れ得ぬほどに烈しく活動する胸を懐いて朝夕悩んでいたのである。四十年来の経験を刻んでなお余りあると見えた余の頭脳は、ただこの截然たる一苦痛を秒ごとに深く印し来るばかりを能事とするように思われた。したがって余の意識の内容はただ一色の悶に塗抹されて、臍上方三寸の辺を日夜にうねうね行きつ戻りつするのみであった。余は明け暮れ自分の身体の中で、この部分だけを早く切り取って犬に投げてやりたい気がした。それでなければこの恐ろしい単調な意識を、一刻も早くどこへか打ちやってしまいたい気がした。またできるならば、このまま睡魔に冒されて、前後も知らず一週間ほど寝込んで、しかる後鷹揚な心持をゆたかに抱いて、爽かな秋の日の光りに、両の眼を颯と開けたかった。少くとも汽車に揺られもせず車に乗せられもせず、すうと東京へ帰って、胃腸病院の一室に這入って、そこに仰向けに倒れていたかった。