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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

実は無知な余を詐わり終せた死は、いつの間にか余の血管に潜り込んで、乏しい血を追い廻しつつ流れていたのだそうである。「容体を聞くと、危険なれどごく安静にしていれば持ち直すかも知れぬという」とは、妻のこの日の朝の部に書き込んだ日記の一句である。余が夜明まで生きようとは、誰も期待していなかったのだとは後から聞いて始めて知った。

余は今でも白い金盥の底に吐き出された血の色と恰好とを、ありありとわが眼の前に思い浮べる事ができる。ましてその当分は寒天のように固まりかけた腥いものが常に眼先に散らついていた。そうして吾が想像に映る血の分量と、それに起因した衰弱とを比較しては、どうしてあれだけの出血が、こう劇しく身体に応えるのだろうといつでも不審に堪えなかった。人間は脈の中の血を半分失うと死に、三分の一失うと昏睡するものだと聞いて、それに吾とも知らず妻の肩に吐きかけた生血の容積を想像の天秤に盛って、命の向う側に重りとして付け加えた時ですら、余はこれほど無理な工面をして生き延びたのだとは思えなかった。

杉本さんが東京へ帰るや否や、――杉本さんはその朝すぐ東京へ帰った。