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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

もっとおりたいが忙がしいから失礼します、その代り手当は充分するつもりでありますと云って、新らしい襟と襟飾を着け易えて、余の枕辺に坐ったとき、余は昨夕夜半に、裄丈の足りない宿の浴衣を着たまま、そっと障子を開けながら、どうかと一言森成さんに余の様子を聞いていた彼人の様子を思い出した。余の記憶にはただそれだけしかとまらなかった杉本さんが、出がけに妻を顧みて、もう一遍吐血があれば、どうしても回復の見込はないものと御諦らめなさらなければいけませんと注意を与えたそうである。実は昨夕にもこの恐るべき再度の吐血が来そうなので、わざわざモルヒネまで注射してそれを防ぎ止めたのだとは、後になってその顛末を審らかにした余に取って、全く思いがけない報知であった。あれほど胸の中は落ちついていたものをと云いたいくらいに、余は平常の心持で苦痛なくその夜を明したのである。――話がつい外れてしまった。

杉本さんは東京へ帰るや否や、自分で電話を看護婦会へかけて、看護婦を二人すぐ余の出先へ送るように頼んでくれた。その時、早く行かんと間に合わないかも知れないからと電話口で急いたので、看護婦は汽車で走る途々も、もういけない頃ではなかろうかと、絶えず余の生命に疑いを挟さんでいた。