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おそろしきつや
恐しき通夜
海野 十三
「新青年」1931(昭和6)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,092 字 · 30 页
こう云って星宮学士が、胸の底まで気持よく吸いこんだ煙草の烟を、フーッと静かに吐きだしたが、この話を傍できいていた川波大尉の顔面が、急にひきつるように硬ばってきたのに、まるで気がつかないような顔をしていたのだった。
「それから、こんな話もある」と学士は第二話のつづきを又語りはじめるのだった。「こいつは、僕の一番骨を折った女だったが、カッキリ半年も懸った。無論その半年の間、僕はこの女ばかりを覘っていたのでは無く、沢山の若い女を猟りあるいている其の片手間に、一つの長篇小説でも書くつもりで、じっくり襲いかかって行ったのだ。その女は、しっかりした家庭に育った九條武子のようなノーブルなお嬢さんだった。彼女の名前を、仮りにC子(とそう云って、星宮学士は何故かハッと呼吸を止めた)――そう、C子と呼ぼう。この少女は、はちきれるような素晴らしい肉体を持っているのに、精神的には不感性に等しく、無類の潔癖だった。すべて彼女の背後にある厳格な教育が、彼女をそうさせたのだった。二三度誘ったが、こりゃ駄目だと思った。そのままで賞味してしまう手段はあったが、それでは充分美味しく戴けない。