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おそろしきつや
恐しき通夜
海野 十三
「新青年」1931(昭和6)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,092 字 · 30 页
。
彼女の家庭のひとびとは、彼女を捨てたその男を呪ってやまなかった。中でも一番ふかい憤怒をいだいたのは、次兄にあたる人だった。次兄は彼女が幼いときから、特別に彼女を可愛いがっていたのだった。
『大きくなったら、あたいのお嫁さんに貰おうかなア』
などと云って両親や、伯母たちに散々笑われたほどだった。そんなに可愛いがった妹が、救う途のない汚辱に泣き暮しているのを見ると、その次兄は、
『復讐だ、復讐だ! きっと其の男を殺して、八ツ裂きにしてやるんだ。おれがその男を殺した廉により、次の日、死刑にされたっていい』
と家中を呶鳴って歩いたものだ。彼は復讐の方法をあれやこれやと考えたのだったが、遂には、それはすべて無駄だと判った。それというのが、その男は、星宮君と同じような近代的の主義思想の男で殺されても一向制裁と感じないという種類の人物だった――とマア、斯様に連絡をつけて話をしないと、どうも面白味が出てこない」
軍医はポケットから手帛を探しだして汗を拭いた。このとき南に面した硝子窓が、カタコトと鳴って、やがてパラパラと高い音をたてて大粒の雨がうち当った。
「ほう、これはひどい雨になったな。