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おそろしきつや

恐しき通夜

海野 十三

「新青年」1931(昭和6)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,092 字 · 30 页

青空文庫

――で其の次兄というのが、智恵袋を、いくたびもいくたびも絞りかえしているうちに、とうとう彼は、その場に三尺も躍りあがるような、素晴らしい復讐を考えついたのだった。それは……」

と、ここまで大蘆原軍医が話してくると、どこかで、

「コトコト、コトコト……」

と扉を叩くような物音がした。三人の男は、サッと顔色をかえると、一斉に入口の扉の方にふりむいたのだった。

「吁ッ!」

扉が、しずかに手前へ開いてゆく。

扉の蔭から、若い女の姿が現われた。ぴったり身体についた緋色の洋装が、よく似合う美しい女だった。

「紅子――」

そう呼んだのは、川波大尉だった。それは、紛れもなく川波大尉夫人の紅子に違いなかったのであった。

「紅子、お前は一体、どうしてこんな夜更に、こんな場所までやって来たのだ」

「ちょいと、お顔がみたかったのよ。それだけなの、おほほほほ」

と紅子は笑いながら、悪びれた様子もなく一座を見まわした。このときニヤリと笑ったのは、星宮学士だった。待ち構えたように、それを逸早く認めた川波大尉だった。彼は軍医の話をそちのけにして、スックリ其の場に立ち上った。

「紅子、お前にちょっと聞くが、儂が土耳古で買ってきたといった珍らしい彫刻のある指環を、お前にやって置いたが、先日そいつを、どこかで失くしたと云ったね」