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おそろしきつや
恐しき通夜
海野 十三
「新青年」1931(昭和6)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,092 字 · 30 页
学士は捻じられながらも、いきなり大尉の脇腹を力一杯
「ウン!」
と蹴とばしたが、この時遅し、大尉は素早く、身体を左に開いたので、気絶することから、辛うじて免れたが、その代り、二人の身体は、もつれあったまま、もんどり打って床の上に仆れてしまった。二人は跳ねおきようと、互に死物ぐるいの格闘をつづけ、机をひっくりかえし、書類箱を押したおしているうちに、どうした弾みか、ピストルが星宮理学士の手許をはなれ、ガチャンと音をたてて、向うの壁に叩きつけられた。
「さあ、この野郎。ほざけるなら、ほざいてみろ!」
そう云って、いかにも勝ちほこった名乗をあげたのは、川波大尉だった。星宮理学士は大尉の逞しい腕にその細首をねじあげられて、ほとんど宙にぶらさがっていた。が、どんな隙があったのだろうか、学士は両手を大尉の股間にグッと落とすと、無我夢中になって大尉の急所を掴んだのだった。
「ウーム」
と大尉が呻った。彼の顔は赤くなり、青くなりしたが、これも死にもの狂いの形相ものすごく、学士の身体をグッと手許へよせると、骨も砕けよと敵手の頸を締めつけた。学士は朦朧と落ちてゆく意識のうちに、頻りに口を大きくひらいては喘いでいた。