轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

五十男の川手氏も、それを聞いていると、ゾーッと水をあびせられたような怖れを感じないではいられなかった。

城郭には一階と二階を合せて、二十に近い部屋数がある。老人二人では迚も全部の掃除が出来ないので、入口に近い階下の五間程を除いては、全く雨戸を閉め切って、誰も入らぬことにしているのだが、若しやその開かずの部屋の奥の方に、何者かが深夜の会合をしているのではあるまいか。山賊共か。まさか今どきそんなものが、人里近いこの辺に棲んでいる筈もない。では、山の奥からさまよい出した谺の精、老樹の精、沼の精、童話の国の魑魅魍魎の類であろうか。

闇と静寂と山中の一軒家という考えが、川手氏を子供のように臆病にしてしまった。しかし、頭から蒲団を被ってちぢこまるほどではない。彼は枕許の手燭に火をつけて、小用に起き上った。

念のために廻り道して、一間隔てた老夫婦の部屋を覗いて見たが、二人は山慣れた健康者、夜半に目を覚ますこともないと見え、グッスリ寝入っている。

広い冷い廊下を踏んで、ガランとした昔風の便所に入った。窓の外はすぐに大樹の茂みである。小障子を開けて空を見ると、星もない真暗闇、大樹の梢がカサコソと動くのは、夜鳥か、それとも、川手氏などには馴染のない小動物が住んでいるのか。