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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
あの深夜の笑い声といい、昨夜の白壁の怪指紋といい、幻視幻聴と思えばそうのようでもあるが、若しあれらが、何者かの計画的な悪戯であったとすれば……何者かといって、外に誰があんな妙な真似をするものか。三重渦巻の指紋の主だ! あいつが早くもこの隠れ家を探し当てて、奇怪な復讐の触手を伸ばしているのではあるまいか。そうとすれば、この墓石の謎の日附の意味も分って来る。「十三日」に「歿」する人は、外ならぬ俺自身なのだ。俺は明日中に、何らかの手段によって復讐魔の為めに惨殺されるのではないだろうか。俺は今、こうして自分自身の墓石を見せつけられているのではあるまいか。
川手氏はクラクラと眩暈を感じて、今にも倒れそうになるのを、やっと我慢して、喘ぎながら母屋に引返し、老夫婦にこの事を告げたので、二人のものは、又かと云わぬばかりに、目を見交しながら、兎も角急いで現場へ行って見たが、案の定、そこには、いくら探しても新しい墓石なんて、影も形もないことが確められた。
まるで狐につままれたような話だけれど、川手氏自身も、あの大きな石碑が、かき消すようになくなっていることを認めない訳には行かなかった。