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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
君は既に指を切っている。その指を御丁寧に錫の函に入れて、態々隅田川に投げ捨てている。そして、引越しをしたと見せかけて、空家の屋根裏に身を潜め、発見されたと知ると、いつの間にか屋根を打ち抜いて、女の身には想像もできない危い芸当を演じて逃走している。犯人でもないものが、こんな馬鹿な真似ができると思うかね。誰に聞かせたって、君が犯人だという事を疑うものは、一人だってある筈がないよ」
女は顔を上げなかった。泣き伏したままの姿勢で、絶望的に呟くばかりであった。
「アア、もう駄目です。……わたしは呪われているのです。……あなたはきっと、そうおっしゃるだろうと思いました」
「気の毒だが、君のお芝居は無駄骨折りばかりだったよ。サア、それではわしと一緒に出かけようか」
宗像博士がそう云って、懐中電燈を持ち変えた時であった。泣き伏していた女が、突然、物に驚いたように、ヒョイと顔を上げた。
「アラ、あなたは誰ですの?」
博士はこの突飛な言葉を聞くと、相手が気でも狂ったのかと怪しんだのであろう、ギョッとしたように、身動きをやめて、鋭く答えた。
「何を云っているのだ。わしは宗像だよ。