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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
飛降り自殺をした男が犯人でなかったばかりでなく、あの北園竜子さえ、犯人かどうかよく分らないということです。僕は確証がほしいのです。あの二人があなたの信じているように、真犯人であってくれればいいと、僕は随分その確証を掴むために悩んだのですが、遺憾ながら確証は全くないことが分ったのです」
ここまで来ると、一座の人々はもう黙っているわけには行かなかった。明智は実に驚くべき妄想を描いているらしいことが分って来たからだ。彼は眼帯の男を否定し、北園竜子をすら否定せんとしている。すると、この殺人事件の犯人は、まだ一人も捕まっていないことになるではないか。事件が落着した心祝いの集いに招かれて、彼は事件の落着そのものを、頭から否定しているのだ。アア、これは一体どうしたことであろう。
刑事部長も捜査課長も、何か口々に驚きの叫び声を発したが、当の宗像博士の憤慨はもう極点に達していた。博士は例の三角型の顎髯を、ピリピリ震わせて、思わず椅子から腰を浮かし、明智の前に握り拳を振廻しながら、わめくのであった。
「明智君、黙りなさい。君は僕に何か私怨でもあるのですか。僕が解決した事件を、なぜぶち毀そうとするのです。