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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

僕は正面から解決することのできない、非常に難解な事件にぶッつかった場合は、いつもこの論理学上の方法を用いることにしているのです。その仮説が、事件のあらゆる細目にぴったり当てはまって、少しも無理がないことが確められたならば、それは最早や仮説ではなくて真実なのです。今度の事件が丁度それでした。そして、僕の組み立てた仮説は、あらゆる細目を満足させたのです。

ここで、その僕の推理の過程を一々説明するのは、少し煩雑すぎると思いますから、今度の事件の様々の不思議の中から、最も重大な、また異様な三つの出来事を拾い出して、僕の仮説がどんなものであるかをお察し願うことにしますが、その第一は例のお化け大会のテントの中から、黒覆面の犯人がどうして逃げ去ることができたかという点です。

あのテントの外には沢山の見物人が群っていました。テントの中には警官や興行者側の人達が四方から犯人を取り巻いていました。その真中の鏡の部屋の中で、犯人はただ一挺のピストルを残したまま、消え失せてしまったのです。直ちに鏡の部屋は打毀され、地中に抜け穴でもあるのではないかと、十二分に調べたと云いますが、そういう手品の種は何一つ発見されなかったのです。