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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
しかし、川手氏の一族だという意味ではありません。彼はこの事件とは何の関係もない、恐らくは一人のルンペンなのでしょう。
犯人は眼帯の男によく似た大男を探して、甘言を以て眼帯の男の服装を与え、多分は御馳走もしたことでしょう。或は金銭を与えもしたでしょう。そして、閉店間際の百貨店の、人影もない屋上に誘い出し、例の偽の遺書をポケットに突込んで、隙を見て地上へ突き落したのです。これは僕の想像ですが、恐らく間違ってはいないと思います」
明智は強い語調で云って、じっと博士の目の中を見つめたが、博士はややまぶしそうに、その視線を避けながら、しぼり出すように、空ろな笑い声を立てた。
「ハハハ……、またしても想像ですか。僕は君の空想を訊ねているのじゃない。確証のある事実が聞きたいのだ」
「その答は簡単ですよ。僕は真犯人の眼帯の男が、まだ生きてピンピンしていることを、よく知っているからです」
「ナニ、生きている? それじゃ君は、その犯人がどこにいるかも知っているのだね」
「無論知っていますよ」
「では、なぜ捉えないのだ。犯人のありかを知りながら、こんな所で無駄なお喋舌りをしていることはないじゃないか」