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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
「イヤ、ここからは見えません。掃除人夫は門を入って右の方へ曲って行きましたから、多分勝手元の近くに置いてあるのでしょう」
「それじゃ、君は、そこで掃除人夫が何をしていたか、少しも知らない訳ですね」
「エエ、知りません。僕は掃除人夫の監督は命じられていませんからね」
刑事はひどく不機嫌であった。何をつまらないことを、クドクドと訊ねているのだと云わぬばかりである。昨夜の徹夜で、神経がいらだっているのだ。
「で、その人夫は、ここから又出て行ったのでしょうね」
博士は我慢強く、掃除人夫のことにこだわっている。一体塵芥車と昨夜の犯罪とに、どんな関係があるというのだろう。
「無論出て行きました。塵芥を運び出すのが仕事ですからね」
「その塵芥車には蓋がしてあったのですか」
「サア、どうですかね。多分蓋がしてあったと思います」
「人夫は一人でしたか」
「二人でした」
「どんな男でしたか。何か特徴はなかったですか」
そこまで問答が進むと、仏頂面で答えていた刑事の顔に、ただならぬ不安の色が現われた。博士がなぜこんなことを、根掘り葉掘り訊ねるのか、その意味がおぼろげに分って来たのだ。彼は暫らく小首をかしげて考えていたが、やがてそれを思い出したらしく、今度は真剣な調子で答えた。