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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
「昔パノラマという見世物があってね、そのパノラマへ入る通路が、やっぱりこんなだったよ。この闇が、つまり現実世界との縁を断つ仕掛けなんだ。そうして置いて、全く別の夢の世界を見せようというのだね。パノラマの発明者は、うまく人間の心理を掴んでいた」
手さぐりで五間程も進むと、左側の闇に、何か白いものが感じられた。やっぱり網膜のいたずらかと疑ったが、どうもそうではないらしい。何かが蹲まっているのだ。
「ナアンだ。骸骨ですよ。骸骨が胡坐をかいているんですよ」
小池はその側に近づいて、骨格に触って見た。絵ではない。人間が縫包を着ているのでもない。本物の骨格模型である。
何も見えぬ黒暗々の中に、この世のたった一つの生きもののように、白い骨が浮き上って、ポツンと胡坐をかいている有様は、怖いというよりも、異様に謎めいて不気味であった。
だが、二人が立止って見ているうちに、妙なことが起った。骸骨がスーッと立上ったのである。そして、いきなり右手を二人の方へ突き出した。その手に紙の束を持っているのが、どうやら見分けられた。
と同時に、骸骨の口がパックリと開いて、カチカチと歯を噛み合した。