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せんそういがくのおじょくにふれて
戦争医学の汚辱にふれて
平光 吾一
――生体解剖事件始末記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,206 字 · 24 页
生体解剖の全貌
そして血に汚れた手を差出すと、立会っていた参謀将校の一人を私に紹介した。
「こちらが西部軍の佐藤吉直大佐です。」
見ると、眼の鋭い堂々たる偉丈夫だった。後で述べるが、彼は生体解剖事件の中心人物であったのだ。しかし、そんなこととは少しも知らぬ私は、「平光ですが……」と簡単に挨拶すると、そのまま立ち去ってしまった。
生体解剖の全貌
石山教授による米軍飛行士捕虜の手術はその後も三回解剖教室で行われそのいずれにも西部軍参謀将校が立会ったということだ。確か二回目の手術の時だったかと思う。頭蓋の切開手術をしていた石山氏は突然私にこう質問したことがあった。
「黒質(Substantia nigra)の位置はどの辺にあったのですか?」
これは、癲癇の発作が、間脳の下にある脳の黒質細胞に刺戟を加えると起るという学説があったので、石山氏がそこを手術すれば癲癇治療に役立つと思い、私に相談をしたわけであったらしい。
私は口で説明したが、彼は解らないという。そこで、脳の固定標本を持参して指示したことがあった。
この時の私の行動が、私を石山氏の顧問(Adviser)として検事に重く認められ、逃れられぬ罪状の一面に加えられたのだった。