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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
そのように腕組みをしてまっすぐに立つと、背丈がずっと高くみえる。彼はなにかをみつけたように眼をほそめて、「野木瓜に実がなったな」と呟き、そのままの姿勢で、だめだと云った。
「矢堂に詰腹を切らせることは、藩の面目を守るどころかまったく威信を失ってしまうだけだ」
「おれも評定の席でそう主張したよ、そんなふうに事をごまかすのはあとに災いの根を残すばかりだとね、しかし、ではどうするかと問い返されて、こうすればいいという思案がないんだ」
「あるさ」と直衛が云った。
宗兵衛は眼をあげた。直衛はこっちへ背を向けて立ったままである。宗兵衛は次の言葉を待ったが、直衛はなにも云わなかった。
「あるというと」と宗兵衛がきいた、「どういう方法だ」
そこで直衛は向き直り、こっちへ来て坐った。
「おれに任せてくれればやってみせる」
「任せろとは、なにをだ」
「裁きだ」と直衛は云った、「どういう資格でもいい、おれに裁きを任せてくれれば藩の面目の立つようにやってみせる」
「おれではいけないのか」
「誰でもいけない、この中所直衛でなければだめだ」
宗兵衛は詮索するような眼つきで、直衛の顔をみつめながら云った、「御定法に槍をつけるつもりじゃあないだろうな」