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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

直衛は頬笑んだ。彫って磨きをかけたような、はっきりした頬笑みかたであった。

「そういうつもりか」と宗兵衛が云った。

「どういうつもりもない、おれなら裁きをつけてみせるというだけだ」と云って直衛は片手をゆっくり上へあげた、「しかし、むりに買って出るわけじゃないぜ」

宗兵衛は考えてからきいた、「どうすればいいんだ」

「城代の朝倉さんに相談するんだな、御定法も曲げず、藩や家中の名聞もきずつけずに裁きをつける、おれならそれができる、そう云えばいいだろう」

「今日は出仕か」

「非番だ、精士館へゆくかもしれないが」

「ここにいてくれ」と宗兵衛が云った、「十時から最後の評定がある、矢堂詰腹の案はその席で決定するだろう、そのまえに御城代と会って相談するつもりだ」

「早くしろよ」と直衛は感情のない口ぶりで云った、「詰腹なんぞ切らせたら取返しのつかないことになるぞ」

宗兵衛は去り、直衛は朝食をたべた。

食事のあと、庭へおりていって、彼は野木瓜を見た。庭木の木瓜ではなく、野生の木瓜で、丈は高いので一尺五寸くらいだし、枝も極めて細い。亡くなった妻がどこからか移したもので、春には朱色の花がみごとに咲く。