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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

――こういう手のこんだ準備をしたにもかかわらず、吟味は殆んど四半刻もかからずに終った。その経過を記すと、定刻に要屋の主従三人が出頭して白洲に並び、諸役人と中所直衛が着座し、城代の朝倉摂津があらわれて、当番与力が三人を呼びあげると、直衛は要屋の主人に「台帳を呈出しろ」と云った。要屋喜四郎は六十一歳、固太りのがっちりした躯で、髪も眉も青年のように黒く、厚い唇や大きな鼻が、膏ぎった顔に精力的な印象を与えた。眼は尋常のようにみえるが、それは火の上に膜を張ったような感じで、ときにその膜の下からいかにも剛腹な、するどい光が放たれるのであった。彼は「訴状に詳しく記してあるし、その点は河本さまのお調べが済んでいるから、台帳をご覧に入れる必要はないと考える」と答えた。

「必要があるかないかは奉行の思案によるものだ」と直衛は穏やかに云った、「明日、同時刻に台帳、諸帳簿、証文など、この件に関する書類をとり揃えてこのお白洲に出頭するように、――今日の吟味はこれまで」

そう云うと、直衛は席をさがって朝倉老に低頭した。控え所へ戻ると、朝倉摂津が待っていて、どういうつもりだと噛みついた。