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かいていごじょうほう

改訂御定法

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页

青空文庫

いくらきょうだいの仲でも、婚約者と同席ではぐあいが悪いのだろう、やがて佳奈は用ありげに立って座を外した。

「そうだ、頼もうと思ったまま忘れていたが」と直衛が云った、「河本家に玄斎日録というのを書いた人がいるか」

「曽祖父だろう」と宗兵衛が答えた。

「その人の書いたものがほかにまだある筈なんだ、たしか閑窓夜話とかいうんだがね」

「私は知らないが、あるかもしれない」

「あったら貸してもらいたい、峻学院(伊予守教清)さまの御事蹟について、閑窓夜話になにか記事があるらしい、玄斎日録にそう書いてあるのをみつけたんだ」

「捜してみよう、いそぐのか」

直衛はちょっと眼を細めた。宗兵衛の顔になにかおちつかない色があるのを、初めて認めたのである。

「どうしたんだ」と直衛がきいた、「なにか心配ごとでもあるのか」

宗兵衛はけげんそうな眼をし、「どうして」と反問した。

「こっちが知るものか」と直衛は云った、「いつもの河本とは人が違っている、なにか困っていることでもあるんじゃないのか」

「矢堂玄蕃は知っているな」

「その話はよそう、玄蕃のことなら聞くまでもない」直衛は茶碗を取ったが、それにはもう茶はなくなっていたので、そのまま元へ戻した、「どこかへ飲みにいくか」