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かいていごじょうほう
改訂御定法
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,422 字 · 58 页
と呼んでいた。
これらの中に矢堂玄蕃がいた。矢堂も筋目の家柄であったが、先代の玄蕃が役目の上の失策で罰せられ、五百石の家禄も二百石に削減されてしまった。いまの玄蕃は二十五歳で家督を相続し、屋敷地割方肝煎という殆んど有名無実のような役についていた。つまり家臣の住居に変動がある場合、その土地の選定や家屋の建築に立会うのだが、この藩のように狭い城下ではそういうことは極めて稀であったし、たとえそういう例が出たにしても、現実には普請奉行が担当するので、矢堂は単に名目上の立会いをするにとどまっていた。彼は二十九歳になるがまだ妻を娶らない。両親は亡く、古くからいる家扶、下僕らとくらしながら、いつとなく側女のような者を引入れ、子供まであるという噂も伝わっていた。
去年の秋、直衛が精士館へかよい始めてから三十日ほどしたとき、矢堂から初めて稽古の相手を求められた。ときたま顔は見ているが、いやな噂があるし、人柄が好ましくないので、同じ道場で稽古をするような場合にも、それまで口をきいたことはなかった。――それからのち、顔が合うと三度に一度ぐらいは相手になった。矢堂の太刀筋には癖があり、勝ちみにするどい技をみせる。