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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

ちょっと手をのばすと、筏の外には氷のように冷たい水がありました。しかし、ふしぎなことには、その水が少しも流れていないのです。まるで古沼かなんぞのように、不気味に静まりかえっているのです。

水があるとわかると、一郎君はすぐその方へ首をのばして、まるで犬が水を飲むように、その黒い冷たい水を、思うさま飲みました。それほどのどがかわいていたのです。

そうして、やっと人心地がつきますと、はだかになっているからだ中がひりひりと痛むのに気づきました。直接火の柱にさわったわけではありませんけれど、そのそばを通ったので、やけどをしていたのです。

そこで、手で水をすくっては、からだの痛むところをぬらしましたが、だんだん気持がハッキリして来るにつれて、心配になるのは保君と哲雄君のことでした。

「保君……哲雄君……」

一郎君は闇の中へ声をかけながら、筏の上をはって、手さぐりをしました。すると、ちょうどその時、保君が正気にかえって、身動きしているのにぶっつかりました。

つづいて、哲雄君も正気づいた様子なので、一郎君は、まず何よりも、二人に水を飲むことをすすめました。

二人が筏のはじへ這って行って、たらふく水を飲み、やけどの手あてなどをしたあとで、三人は、お互の顔も見えぬ闇の中で、手を取りあって、命の助ったことを喜びあいました。