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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「よかったねえ。でも、どうして助かったんだろう。僕はもう焼け死ぬものと覚悟をきめていたんだよ」
哲雄君が不思議そうにいいました。
一郎君は自慢にならないように注意しながら、板で水を掻いて、筏を火の柱から遠ざけたことを語りました。
「ああ、そうだったの。じゃ、君が助けてくれたんだねえ。君は僕たち二人の命の恩人なんだねえ」
哲雄君はしっかり一郎君の手をにぎって、感謝にたえないようにいうのでした。
「ありがとう、一郎君。僕も君に助けてもらったんだねえ」
ちゃめの保君も、いつになくしんみりといって、一郎君の手をにぎりました。
そうして、しばらくの間、三人は涙ぐみながら、お互の手をにぎり合っていましたが、やがて、三人とも、寒くてたまらないことに気がつきました。
ほんとうに、そのくら闇の世界は、何から何まで、さいぜんの火の柱のそばとは、あべこべだったのです。温度までも、熱帯からいきなり寒帯に来たほど、ちがっているのです。
三人は、寒い寒いといいながら、手さぐりで、さいぜんぬぎすてたシャツとズボンをさがし、いそいでそれを着こみましたが、それでもまだ寒くてたまりません。