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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页
「キャーッ、キャーッ」というような、叫声が、まず聞えたのです。
びっくりして、その方を見ますと、向こうの岸に近い水面に、何か小さなものが浮かんで、バチャバチャ水をはねかえしているのです。
「オヤ、なんだろう。ア、人間だ、人間だ」
「子供らしいね。土人の子供だよ」
それは十二三歳の土人の子供が、ただ一人水泳ぎをしていたのです。しかし、なぜあんなに悲鳴をあげて、あわてているのでしょう。
「ア、子供のうしろに何か泳いでいる。変なものが泳いでいる」
「あれ鰐じゃない?」
「エ、鰐だって?」
やがて、そのものの正体がハッキリわかりました。鰐です。一匹の大きな鰐が、土人の子供を、一呑みにしようと、追っかけているのです。
その時、子供の叫声のほかに、また別の悲鳴が聞えて来ました。
よく見ると、岸の林のしげみの中に、チラチラと人の姿が見えます。髪を長く肩にたらした、はだかの人です。女のようです。子供の母親かも知れません。
その二つの叫声が入りまじって、けたたましく響きわたる中で、土人の子供と大鰐との、死にものぐるいの競争が行われています。
子供と鰐とのへだたりは、わずか三メートルほどです。