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しんたからじま

新宝島

江戸川 乱歩

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年4月~1941(昭和16)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 页

青空文庫

僕達は少ししあわせすぎやしないだろうか。無人島って、こんな平和なもんだろうか。そのうちに何か恐しいことが起るんじゃないかしら。僕はねえ、あの森の奥がこわいんだよ。あの中に何があるか、僕達にはまだちっともわかっていないんだからねえ」

少年達はそんなことを語り合いました。何か恐しい事が起るんじゃないかと、心配そうに言ったのは哲雄君でしたが、ほんとうに、考えて見れば、三人は少ししあわせすぎるようです。この一月、いろいろ苦労もしましたけれど、これという恐しい出来事には、一度も出あっていないのです。あまり平和すぎて、気味がわるいほどです。

間もなく、何かびっくりするような事が起るのではないでしょうか。あの奥底の知れぬ森の中から、えたいの知れぬ悪魔が、じっと三人の方を見守って、時の来るのを待っているのではありますまいか。

やがて、この哲雄君の心配が、思いもよらぬ形であらわれて来る日が来ました。ほんとうにゾッとするような事が、三人の行手にまちかまえていたのです。

×     ×     ×

ある日のこと、保君は一人で森の中を歩きまわっていました。お猿の性の保君は、誰よりも森がすきなのです。