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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

などと嘲笑われるも心外と――一族四人を連れて、特に威儀を張って、出向いて行ったのである。

――ところが、その席で。

端なくも、主が自慢の、赤絵の水挿が、客の目をみはらせたはいいが、話のはずみから、

(はて? この品は、茶わん屋捨次郎の宅で、見たことがある。同家で野武士に盗まれたという名品と同じじゃが)

と、つい口辷らせた客がある。

主は驚いて、

(滅相もない。これは近頃、堺の茶道具屋から、千金に近い値で手に入れた物――)

と、書付まで示すと、客もことばの手前、

(では、盗んだ野武士が堺の商人へ売りとばしたのが、転々して、御当家へ廻って来たのでおざろう。茶わん屋へ押し入った野武士は、御厨の渡辺天蔵と、名まで知れておることで、間違いはない)

と明らさまにいったので、席はいとど白けてしまった。

なぜなら、そういった客は、もちろんそこに居合わせた蜂須賀小六の、どんな存在か、また、どんな係累を持っている者か、などということは、知らなかったに違いないが、御厨の渡辺天蔵といえば、小六の甥にあたる者で、同時に、彼の土豪的勢力を構成している一族の、その一人であるということは、主も客の大部分も、かねがね弁えていたからである。