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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

「それは」

と、指して訊ねた。

「見本の物か、出来た品か」

「新品にございますが」

「どれ、見せい」

「いえ、お目にかけるまでには、まだなかなか」

「いやいや。ちょうど、試し物があるのだ。――撃てぬことはあるまい」

「弾は飛びますが、関金の噛み合わせが、どうやっても、原品のようにつくれませぬ。もう一息、工夫いたせばと思っておりますが」

「試すのも、工夫の一つだ。よこせ、その鉄砲を」

小六が国吉の手からそれを取って、銃の腹を肱に乗せ、物を狙うような姿勢をしていた時である。

三度目の迎えが来た。

が、今度は、小者の取次ではなかった。ゆうべ御厨へ行って帰って来た稲田大炊助なのである。

「まだ、御用はおすみになりませぬか」

大炊の声に、小六は、鉄砲の台尻を肋骨に当てたままふり顧って、

「おお。稲田」

「お早くお越しねがいとう存じます。弁口をもって、天蔵殿を召し連れては参りましたが、妙な? ――と気どられたか、落着かないご挙動。悪くすると、檻を破る虎になるやも知れませぬ」

「よしッ、参ろう」

大炊助に鉄砲を持たせて、小六は、森の小道から書院の庭のほうへ、大股に歩いて行った。

成敗